コンチキチキチと鳴らすのは京都の祇園祭。 ラッセーラはねぶた祭り。祭りの音は古今東西。 水の町・三島の祭りはチャンチキチ。 とろろこぶのような梅花藻がゆらめく湧水の小川は、晩夏の日差しに透明な光をキラキラさせ、三嶋大社の方からはしゃぎりの鉦が…
夏に生まれたわたしは、どんなに暑くてもだるくなってもどうしたって夏が好きでしかたない。 抜けるような青空や入道雲も。 蝉の声も。 川面がきらきらするのも。 山や森の草いきれも。 アスファルトの逃げ水も。 夏練帰りの白い制服も。 一面の青稲が草原み…
中学校2年生の頃だから、随分昔になる。その年の夏、苦手だった薄荷味のキャンディが突然食べられるようになった。 それまでは夜店の薄荷パイプも薄荷糖も苦手で、ドロップ缶に入っていた薄荷味なんかは、 透明な宝石みたいな赤や緑のキャンディの中に一つだ…
陶淵明「桃花源記」に描かれた仙境・桃源郷。4月の初め、果樹の生産で名高い笛吹は、まさに桃源郷と呼ぶにふさわしくそこここの畑に桃色の花が咲き乱れるユートピアのようだ。 土地の色、というのだろうか。 まだ役目の前の眠りについている桃狩り・ぶどう狩…
秋の色と言って思い浮かべるのは何色だろう。 くすんだ赤、煉瓦色、葡萄色。 蔦や漆、紅葉の緋色。 腐した枯葉や小枝を含む土の濃茶色、あるいは乾いた木々の幹の灰茶色。 そしてなんといっても稲穂や公孫樹、全てを包む斜陽の熟れたような深い金色。 なぜだ…
10月も半ばを過ぎる。 空は益々明瞭になり、色づいた木々が風景に彩りを添える午後、涼しい風に運ばれてくすんだ枯れ葉が街路に吹き溜まる、そんな気持ちの良い秋。 家々や商店の軒先に丸々と熟れた橙色のカボチャたちが目につくようになると、少しずつ街の…
葛の紫の花が咲いた 彼岸花のつぼみがふくらんだ ヘチマの黄色い花が咲いた ほら、畑の端っこにケイトウの花が見える すすきの穂 荻の穂ふさふさ えのころ草ころころ 稲の穂が黄色なってきたね、 重くなってきたね そろそろ桑の実なるころかしら、 アケビが…
この記事を通して季節の移ろいを感じてもらいたいと目論む、函南在住の猫好き女のブログエッセイ。
9日9日。 重陽。 上巳の節句が桃の節句なのに対して、9月のこちらは菊の節句である。 ひなまつりや端午の節句、七夕なんかが市民権を得ているのに対して、人日(正月七日)と重陽は五節句の中でもいまいちマイナー。あまり知られていないけれど、ひとつひと…
コロナのせいだろうか、 今年の夏は消えるように終わった気がする。 海やプールにも行かなかったし、お祭りもなかった。 たっぷりと残ったブルーのかき氷シロップ。 ボトルで残ったソーダ水。 まるで消化しきれなかった夏の象徴みたいに、キッチンの隅に残っ…
江戸下町情緒溢れる夏。 「恐れ入谷の鬼子母神」で有名な真源寺の界隈では、毎年7月に朝顔市が開かれる。 青、紫、紅紫。 絞ったちりめんみたいな変わり種。 参道を埋め尽くす植木屋自慢の朝顔たち。 隅田川を目指して歩けば、そこはかっぱ橋の道具街。 職人…
カントリーな雰囲気が旅情を誘う、 7月の美瑛・富良野。 県道沿いのレストラン「きゃらうぇい」。 わさびを添えたさっぱりトンテキ、自家製ソーセージカレーはピリッとおいしい。 なつかしい絵本、発見。 中富良野の畑の真ん中にあった小さなパン屋さん「pea…
丘をこえていこうよ 真澄の空は朗らかに晴れて 楽しい心 (藤山一郎「丘を越えて」より) どこまでも続く夏の丘。 のどかな緑の牧場に、白い花咲くじゃがいも畑、そば畑、背の高いもろこし畑。 抜けるような青空の下、熟れた黄金色の麦畑がおしゃべりでもす…
美瑛や富良野が好きで、何度か訪れている。 どことなく懐かしいのは、少し冷涼な空気と牧場の匂いが、幼い頃を過ごした御殿場に似ているからかもしれない。 丘の、広々として少しだけさみしげなその佇まいが、好きだった永田萌や葉祥明の描く絵本の風景にど…
6月。あの5月の、夏の始めの初々しい気持ちがカレンダーと共に褪せてくると、とたんになにもかも物憂いような、そんなメランコリーな気分になる。夏の終わりも物憂い季節だが、そこには切なさと懐かしさが一緒くたになった静かな安心感がある。それに比べて6…
5月も半ばを過ぎて、街も初夏の装い。晴れた日などは熟れた草のまろい匂いと太陽の匂いがふんわりと風に乗ってくる。家々の庭にも薔薇、ポピー、名前はわからないが鮮やかな初夏の花々が満開だ。なんとも気持ちが良い日々が続く。 いつもはダラダラと休日を…
一面の青い花びらが広がる丘。海から駆け上がってきた潮風に花びらが一斉に揺れると、その青さも相まって本当に水面が波打っているかのように見える。 連休を利用して一面青の花畑で有名な国営ひたち海浜公園に行ってきた。茨城というのは思ったよりも遠い場…
つつじやさつき、藤の花が咲いたら、まもなく初夏が訪れる。山の緑もどことなく色を濃くし、空もまた青を増して行くように感じる。 連休も近く、世間もまた初夏の気配に浮き足立っているようである。 まったく初夏という言葉の清々しさったらない。おろした…
伊東市の富戸や川奈のあたりの海沿いに小室山という小さな山がある。春も終わりを迎え初夏の気配が見え始める頃、この小室山麓のつつじが満開を迎える。 目に痛いほどのピンクや赤の大きな花弁が枝はいっぱいに広がり、アーチ状のつつじをくぐればまるで千と…
私が住んでいるのは函嶺の南に位置する小さな田舎町である。春になると新芽の萌葱色と常緑樹の緑の山腹に、まるで雲か霞のようにふわふわと淡い白や桃色が滲むのを見ることができる。山笑う、とはまさにこのこと。 土手には菜の花、田には蓮華。野や山際にも…
"赤い鼻緒がぷつりと切れた継げてくれる手、ありゃしない"この艶っぽい歌詞は坂本冬美の「夜桜お七」の歌い始めである。演歌はあまり聞かない方だが、この曲は思わず聞き込んでしまう不思議な魔力がある。 地元の近くに三嶋大社という由緒正しい神社があるの…
暖かい日が続く。近所の塀にも梅や桃がぽつぽつと咲き出し、良い香りも漂う。今日は、まさに春の弥生のこの佳き日。ひなまつりである。 もう少女の頃はとうにすぎたが、今でも虫干しを兼ねて、我が家ではお雛様を飾っている。お雛様の緋毛氈を見ると、ワクク…