猫屋敷の徒然country diary

伊豆の片田舎に住む猫好きが徒然なるままに書き綴ります。

夏の終わりの九龍珠

コロナのせいだろうか、

今年の夏は消えるように終わった気がする。

海やプールにも行かなかったし、お祭りもなかった。

たっぷりと残ったブルーのかき氷シロップ。

ボトルで残ったソーダ水。

まるで消化しきれなかった夏の象徴みたいに、キッチンの隅に残っている。

 

週末、ドラゴンフルーツが手に入ったので、九龍珠(クーロンボール)をこしらえた。f:id:eureka_no_yuuutsu:20200917205830j:image

九龍珠はフルーツを閉じ込めたビー玉みたいな香港のデザート。

ドラゴンフルーツ、キウイ、シトラス、リンゴ、パイン、ブドウを小さく切って型に入れ、砂糖とレモン汁で味付けした溶かした寒天を入れて冷やすだけ。

まんまるい宝石みたいなゼリー玉が出来上がる。

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大人になって初めて行った海外は香港だった。

子供の頃はテレビでジャッキー・チェンカンフー映画や、ドラゴンボールらんま1/2を見て育った世代。

ずっと香港という街に憧れていた。

この頃は香港はすでに返還されて、ビルの隙間に飛び込む啓徳空港九龍城砦もなかったが、英語と広東語が飛び交い、街を埋め尽くすネオンの看板や玉石混淆のナイトマーケットの呼び声も怪しげな、あの混沌とした空気にすっかりと魅了されてしまった。

今でも香港映画は好きで、徐克や王晶の娯楽アクション映画やカンフー映画、ホイ兄弟や周星馳のコメディから香港ノアール、青春映画や恐怖映画と、なんでも見る。

この時期に特に思い出すのは王家衛の映画。

恋する惑星」「欲望の翼」「花様年華」。

映画の中に溢れる香港の滲むようなネオンの色彩と瑞々しい空気感。

それは、甘く気怠い夏の気配に似ている。

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レトロなガラスの器に入れた九龍珠に、ブルーのシロップとソーダ水を注ぐ。

今はなきあの頃の香港のノスタルジアを感じながら、最後の夏をすくって食べる。