猫屋敷の徒然country diary

伊豆の片田舎に住む猫好きが徒然なるままに書き綴ります。

ハロウィンの夜のバタードラム

10月も半ばを過ぎる。

空は益々明瞭になり、色づいた木々が風景に彩りを添える午後、涼しい風に運ばれてくすんだ枯れ葉が街路に吹き溜まる、そんな気持ちの良い秋。

 

家々や商店の軒先に丸々と熟れた橙色のカボチャたちが目につくようになると、少しずつ街の気配が怪しく浮き足立つ。

ハロウィンが近いのだ。

 

私はケルト由来のこのアメリカの行事が、子供の頃から好きだった。

お化けに仮装することや怪しい儀式じみたお菓子のプレゼント、日常と非日常、良いものと悪いものがひっくり返ってしまうあの不思議な感覚がとてつもなく好きなのだ。

小学生以来本格的な仮装をしたことはないが、その代わりにハロウィンの日は、カボチャのケーキやら料理、怪しげな外国のお菓子なんかを食べながらホラーやファンタジー映画を観るようにしている。

 

この時観る映画は本格ホラーではなく、ちょっとジョークじみたものや、少年少女が活躍するものが良い。

映画の中の少年少女たちと一緒になって、不気味なカカシの立つトウモロコシ畑をさ迷い、幽霊屋敷に悲鳴を上げて、殺人ピエロや怪物と戦う。

行ったこともないアメリカの、乾いた秋の田舎町の空気感を存分に味わううちに、心はいつの間にか海賊の冒険や魔女の森に想いを馳せる少女の頃に戻っていく。

 

ハロウィンの夜。

映画をはしごして、気付けば夜中の12時。

怪奇な夜はもうおしまい。

 

ハロウィンの締めくくりには、熱いナイトキャップを一杯やろう。

耐熱ガラスにバターと砂糖と塩少々。シナモンとナツメグを振り入れて、ラム酒を人差し指の一関節分。熱いお湯を注ぎいれて、バターが溶けて蓋になったら、香り高くてほんのり甘いホット・バタード・ラムの出来上がり。

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熱々なホットカクテルを飲んでいるうちに、少女の仮装はいつしか解けて、大人の深い秋の余韻が胸を満たしていく。