秋の色
秋の色と言って思い浮かべるのは何色だろう。
くすんだ赤、煉瓦色、葡萄色。
蔦や漆、紅葉の緋色。
腐した枯葉や小枝を含む土の濃茶色、あるいは乾いた木々の幹の灰茶色。
そしてなんといっても稲穂や公孫樹、全てを包む斜陽の熟れたような深い金色。
なぜだろう。
夏の暑い盛りの山々は青々と茂っているのに、風が冷たくなるにつれ、空気が澄んで霜も降りる寒い時期になるにつれ、山々の彩りは黄色や赤や茶色など暖かみのある暖色系になってゆく。
秋の色は暖かく、どこまでも深い。そして黄昏の頃には、全てが金色の光に染まるのである。
わたしの好きな映画音楽で「On the golden pond(黄昏)」のテーマ曲がある。
この穏やかなピアノの音色と寄り添うようなオーケストラのハーモニーを聴くと、わたしの頭の中はいつも憧憬にも似た胸を締めつける幸福に包まれる。その時、瞼の裏に染み込むように広がる音色はやはり、秋の黄昏のような金色をしているのだ。
季節も人も、季節を重ねるにつれ彩り、深くまろやかに熟していくのだと思う。
わたしもこれから、この秋の幾重にもかなさる色彩のように深く優しい時間を重ねて、そして穏やかな金色の光に胸を満たされる黄昏のために、心のありようを熟成させていきたい。