猫屋敷の徒然country diary

伊豆の片田舎に住む猫好きが徒然なるままに書き綴ります。

薄荷味のキャンディ

中学校2年生の頃だから、随分昔になる。
その年の夏、苦手だった薄荷味のキャンディが突然食べられるようになった。
 
それまでは夜店の薄荷パイプも薄荷糖も苦手で、ドロップ缶に入っていた薄荷味なんかは、 透明な宝石みたいな赤や緑のキャンディの中に一つだけただの石ころが混入してしまったかのような味気なさで特に好きではなかったのだ。

 

それは透明な種類の薄荷キャンディだった。

中にはビー玉みたいにうっすらと一筋黄色やピンクのラインが入っていて、それぞれ柚子と梅の風味がほんのりつけられていた。

キャンディを頬張りながら自転車に乗れば、 風がひんやりと喉元で回転して鼻から抜けていくのを感じて心地よい。
口の中で広がる薄荷のほの甘い味と柚子の香り、その時、ふと子供だった自分が少し大人に近づいたような心地がした。
背も伸びたし、服装も少しティーンらしいものに変えた、ファッション雑誌を読むことも増えたし、好きな異性の話題も口の端にのぼることもあった。
しかし不思議なことにそれでも私にとってこの瞬間が、 自分が一歩大人になったと気づいた瞬間だったと思う。

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川沿いの堤防で自転車を止めて、キャンディを初夏の青空に翳してみれば、かつて宝石に紛れ込んだ石ころのように思えた薄荷キャンディは、 日の光を透かしてキラキラと光る紛れもない宝石に見えた。

今では薄荷味( これは大事なことなのだがガムや西洋のキャンディであるミント味 ではない)が好きで、特に昔ながらの練り上げた不透明な薄荷飴を愛している。
あの頃は大人の象徴だった薄荷のあのうす甘い清涼感は、今では大人になる前の、透明できらきらしてたあの頃を思い出す優しいノスタルジーの味になっているから不思議だ。 
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