猫屋敷の徒然country diary

伊豆の片田舎に住む猫好きが徒然なるままに書き綴ります。

伊豆の春

私が住んでいるのは函嶺の南に位置する小さな田舎町である。春になると新芽の萌葱色と常緑樹の緑の山腹に、まるで雲か霞のようにふわふわと淡い白や桃色が滲むのを見ることができる。
山笑う、とはまさにこのこと。

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土手には菜の花、田には蓮華。
野や山際にもすみれやたんぽぽ、野の花が、まるで色とりどりのビーズ粒をばらまいたかのように一面の緑に顔を出す。
里の庭先には、梅を先遣隊に、枝垂れ桃、黄色いレンギョウ、小手鞠、木蓮、鮮やかな紫色の花蘇芳が咲き誇る。
そして春も盛りを迎えるとこれに桜の花が加わり、こぼれんばかりに花開く。
先ほどの山の霞とは、まさに春山に咲く山桜のことなのだ。

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温泉も出る温暖な土地柄だからだろうか、伊豆の春は早く、ウグイスなどは時折冬の寒空の下で鳴くこともある。
春になると気候の良い伊豆の海は穏やかなパステル色になる。
桜は早咲きの熱海桜や河津桜から、ソメイヨシノまで種類豊富。
大室山の麓、さくらの里では約40種1500本の桜が咲き乱れる。
伊豆第一の宮三嶋大社の境内でも満開の桜が咲き、辺りを散策すれば、源平川の川面に、福福しく羽を丸めた午睡の鴨と淡い桃色の花筏を見ることができる。

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また国道1号線沿い。ちょうど春霞の富士の裾野に愛鷹山嶺が横たわってみえる沼津を過ぎたあたりから、道路脇の川に沿って満開の白隠桜が何キロと続いている。
冷房にするほどではないが閉めておくには暑いうららかな陽気、車の窓をあげれば春風に舞う花びらがひらりと舞い込んでくる。


春というのはまことに心が躍る季節である。

 



ただひとつ悲しいことが。
今まで春に立派な桜を咲かせていた函南駅前の坂道の桜が道路の拡張のためか、突然伐採されてしまったのである。
夕暮れ時、駅からの帰り道にみた桜並木は本当に美しかっただけに、実に残念である。道を無駄に広げるよりもあの美しい桜並木を観光資源にする方が百倍も有意義であっただろう。