猫屋敷の徒然country diary

伊豆の片田舎に住む猫好きが徒然なるままに書き綴ります。

6月のジンジャーシロップ

6月。あの5月の、夏の始めの初々しい気持ちがカレンダーと共に褪せてくると、とたんになにもかも物憂いような、そんなメランコリーな気分になる。
夏の終わりも物憂い季節だが、そこには切なさと懐かしさが一緒くたになった静かな安心感がある。それに比べて6月のこの気分はどうにも落ち着かないのだ。
夏特有の水気を含んだ重い空気にまだ体が慣れないのもあるが、なにより梅雨のあとに来る盛夏に気後れしてしまっているというのがあると思う。
何か夏に向けて準備をしないといけないような気がするが、何もできていない焦りばかり先に立ち普段のものぐさに拍車がかかる。


そんな6月の憂鬱に効くのがジンジャーシロップだ。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910194816j:image

わたしはたまに大量の生姜で、自家製のジンジャーシロップを作る。以前秋口に新生姜で作ったのもは匂いが強くて苦手だったので、今年は根生姜を使った。
生姜を砂糖をまぶして一晩寝かし、蜂蜜、スパイス、レモン汁とともにじっくり煮出す。
今回は辛口にするためにローリエ八角クローブ、シナモン、胡椒、鷹の爪の各種スパイスを多めに入れてみた。目が瞬くくらいスパイスと生姜の刺激的な風味に出来上がった。

これをソーダ水で割ったジンジャーエールを飲むのが良い。
ビリッとした刺激が頭からつま先まで電気みたいに走りぬけ、一気にエネルギーが充電されるのだ。
飲んだ後は胸のあたりがポッポとして、低速気味だった体のエンジンがようやく回って来るのを感じる。そうするといつのまにか憂鬱が消えてしまっているんだから、生姜の力ってすごい。


ジンジャーシロップは、他にもホットミルクに入れたり、紅茶に入れたりしても生姜のやさしい風味が広がりとても美味しい。
ちなみに煮出した後の生姜はペーストにしてジャムにする。肉の下味や生姜焼き、生地に練りこんでジンジャークッキーを作っても楽しい。


暑い夏にも、寒い冬にも。
生姜、無敵。

 

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910194809j:image

若葉の頃とサバサンド

5月も半ばを過ぎて、街も初夏の装い。晴れた日などは熟れた草のまろい匂いと太陽の匂いがふんわりと風に乗ってくる。家々の庭にも薔薇、ポピー、名前はわからないが鮮やかな初夏の花々が満開だ。
なんとも気持ちが良い日々が続く。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910193751j:image
いつもはダラダラと休日を過ごす派だが、こんな気持ちの良い休日は新しいことをしようという気が不思議とむくむく湧き上がってくる。


今朝はトルコ料理のサバサンドに挑戦してみた。塩ヨーグルトに一晩漬けて臭みをとった肉厚のサバを野菜とガーリックバター、マスタードで味付けする。
去年ベトナムで買ったライムペッパーが良いパンチになってなかなか美味にできた。

昔、池田あきこさんの絵本(ダヤンという猫が主役のシリーズでわたしは彼女の本が大好きだ)でワニのイワンがイワシサンドを食べていたのに憧れて作ってみたのだが、これはこれからも使えるメニューになりそうだ(たまにしか料理をしないのでいつになるかは分からないが)。


昨日『かぐや姫の物語』でタケノコと捨丸がキナウリを食べているのが忘れられなくて、今日スーパーでメロンを買ってしまった(なんと600円!家族で3日に分けて食べれると思えばなんてお得!)。
メロンやさくらんぼなど、だんだんと夏の氷菓も出回り、家々の庭の花と同じくスーパーもじつに彩り豊かだ。


この季節、こんなにも行動的になったりなにもなくても楽しい気持ちになるのは、きっと生物としての本能がそうさせているのだと思う。植物と同じで春に芽吹き、夏にかけて気持ちが若々しく育つのだ(その証拠に秋にはなんだか落ち着いた気持ちになるでしょ)。


家にも街にも、初夏は好奇心を刺激するもので溢れていて時間が足りなくて困る。
梅雨を前に新しいことを始めるなら、きっと今が最高だ。

潮風と青い花の丘

一面の青い花びらが広がる丘。海から駆け上がってきた潮風に花びらが一斉に揺れると、その青さも相まって本当に水面が波打っているかのように見える。

連休を利用して一面青の花畑で有名な国営ひたち海浜公園に行ってきた。
茨城というのは思ったよりも遠い場所だ。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910193245j:image
この青い花の名前はネモフィラ
このゴールデンウィークの時期に一斉に咲き、一面をベイビーブルーに埋め尽くす。
時折顔を出す赤いポピーもかわいらしい。

花畑の丘を葛折りの小さな小径が続いており、写真には映ってはいないが人人人。大混雑である。訪日外国人の姿も目立った。

今年は気温が高く例年より開花が早まったようで、開花期の後半になってしまっていたのだが、それでもなかなか見ごたえがあった。
数ある初夏の花の中から、この花にスポットを当てて、広大な敷地を青一色に統一したのは、今のSNSブームを予見したなかなかの慧眼じゃないだろうか。


ひたち海浜公園のある勝田の隣は、水戸黄門や納豆で有名な水戸だ。
時間もあったので、日本三大庭園である水戸偕楽園を訪れたが、残念ながら今年は藤やつつじもすでに終わっており、竹林の筍も随分と伸びあがっていた。
とはいえ、刈り込まれた広々とした庭園や手入れされた風通しの良い庵は見応えがあり、入口外の古い売店で売っていた甘酸っぱい梅ソフトもなかなかの絶品。
今度は梅の花の時期に来たいものだ。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910193303j:imageネモフィラのあまりの綺麗さに浮かされて、ついうっかりと土産を買いまくってしまった。

これはネモフィラのベイクドチョコレートと、ネモフィラをイメージしたハーブティー(バタフライピーとレモングラス)である。このバタフライピーのお茶はタイなどで飲まれているらしく、目がさめるようなきれいなブルーをしている。味はまったくないので、普通は蜂蜜やレモンを入れるそうだ。
レモンを入れると化学反応できれいなパープルになるらしいので、レモンを手に入れたらぜひやってみたいな。

初夏の風

つつじやさつき、藤の花が咲いたら、まもなく初夏が訪れる。
山の緑もどことなく色を濃くし、空もまた青を増して行くように感じる。

連休も近く、世間もまた初夏の気配に浮き足立っているようである。


まったく初夏という言葉の清々しさったらない。
おろしたての白いワイシャツのような、薄荷油の瓶を開けた時のような。
そんな気持ちの良さがある。

爽やかな風に誘われて、旅に出たくて仕方がない今日この頃である。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910192729j:image
夏近し 風に恋する 卯月かな

つつじの花

伊東市の富戸や川奈のあたりの海沿いに小室山という小さな山がある。春も終わりを迎え初夏の気配が見え始める頃、この小室山麓のつつじが満開を迎える。

目に痛いほどのピンクや赤の大きな花弁が枝はいっぱいに広がり、アーチ状のつつじをくぐればまるで千と千尋みたいに別の世界に行ってしまいそうな雰囲気すらある。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910192317j:image
余談だが、小室山頂は東伊豆の海が一望できる、大変気持ちの良い場所である。
リフトで登るのでちょっとしたアトラクション気分も味わうことができるので晴れた日などにはオススメ。

観光地然とした麓での売店では、ピンクのつつじソフト、オレンジのニューサマーソフトのふたつを味わうことができる。
絶対後者の方が美味しいにもかかわらず、わたしなどは祭りの気分に浸っているため、なぜかいつもつつじソフトを頼んでしまう。

 

そういえば子供の頃は、よく学校の校庭のつつじの蜜を吸っていた。
蜜を求めて群がる蟻のような子供たちのせいで、地面には濃いピンクの吸殻もとい花びらが絵の具を散りばめたかのように一面に広がっていたものである。

つつじの花を見ていると、あの頃のつつじの蜜のほのかな甘みが口の中に広がるような、そんな不思議で懐かしい感覚を思い出す。

 

伊豆の春

私が住んでいるのは函嶺の南に位置する小さな田舎町である。春になると新芽の萌葱色と常緑樹の緑の山腹に、まるで雲か霞のようにふわふわと淡い白や桃色が滲むのを見ることができる。
山笑う、とはまさにこのこと。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910191651j:image

土手には菜の花、田には蓮華。
野や山際にもすみれやたんぽぽ、野の花が、まるで色とりどりのビーズ粒をばらまいたかのように一面の緑に顔を出す。
里の庭先には、梅を先遣隊に、枝垂れ桃、黄色いレンギョウ、小手鞠、木蓮、鮮やかな紫色の花蘇芳が咲き誇る。
そして春も盛りを迎えるとこれに桜の花が加わり、こぼれんばかりに花開く。
先ほどの山の霞とは、まさに春山に咲く山桜のことなのだ。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910191628j:image
温泉も出る温暖な土地柄だからだろうか、伊豆の春は早く、ウグイスなどは時折冬の寒空の下で鳴くこともある。
春になると気候の良い伊豆の海は穏やかなパステル色になる。
桜は早咲きの熱海桜や河津桜から、ソメイヨシノまで種類豊富。
大室山の麓、さくらの里では約40種1500本の桜が咲き乱れる。
伊豆第一の宮三嶋大社の境内でも満開の桜が咲き、辺りを散策すれば、源平川の川面に、福福しく羽を丸めた午睡の鴨と淡い桃色の花筏を見ることができる。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910191724j:image

また国道1号線沿い。ちょうど春霞の富士の裾野に愛鷹山嶺が横たわってみえる沼津を過ぎたあたりから、道路脇の川に沿って満開の白隠桜が何キロと続いている。
冷房にするほどではないが閉めておくには暑いうららかな陽気、車の窓をあげれば春風に舞う花びらがひらりと舞い込んでくる。


春というのはまことに心が躍る季節である。

 



ただひとつ悲しいことが。
今まで春に立派な桜を咲かせていた函南駅前の坂道の桜が道路の拡張のためか、突然伐採されてしまったのである。
夕暮れ時、駅からの帰り道にみた桜並木は本当に美しかっただけに、実に残念である。道を無駄に広げるよりもあの美しい桜並木を観光資源にする方が百倍も有意義であっただろう。

夜桜とおぼろ月夜

"赤い鼻緒がぷつりと切れた
継げてくれる手、ありゃしない"
この艶っぽい歌詞は坂本冬美の「夜桜お七」の歌い始めである。
演歌はあまり聞かない方だが、この曲は思わず聞き込んでしまう不思議な魔力がある。

 

地元の近くに三嶋大社という由緒正しい神社があるのだが、ここの夜桜は実に色っぽい。

昼間は明るく華やかな参道は、夜になると朱色の行灯がぼんやり灯り、実に妖しげな雰囲気となる参道の中央にある神池には、対岸の参道の夜店の煌びやかな明かりが映り、まさに千と千尋の神様の世界である。

f:id:eureka_no_yuuutsu:20200910190950j:image

この日は朧月夜。
月夜と満開の桜、これ以上艶やかな組み合わせはあるだろうか。
いや、ない!
まさに息を飲む美しさである。

何年か前までは三嶋大社の境内に茶屋があった。茶屋の緋毛氈で味噌おでんと花見酒というのもきっと良いだろうなぁ。桜の時期だけでも是非また営業して欲しいものだ。

2018年3月